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個人事業主の法人成りとは?社会保険の点からメリット・デメリットを解説

事業を行う場合には、個人事業として行うか、法人を設立して行うかのいずれかの形を取ることが通常です。また、法人を設立するときも、個人事業から法人組織へ変更する場合と、起業とともに法人として設立する場合の2通りがあります。 […]

事業を行う場合には、個人事業として行うか、法人を設立して行うかのいずれかの形を取ることが通常です。また、法人を設立するときも、個人事業から法人組織へ変更する場合と、起業とともに法人として設立する場合の2通りがあります。

当記事では、個人事業から法人組織へ変更するいわゆる「法人成り」について、紹介するとともに、社会保険の点から法人成りのメリット・デメリットをあわせて紹介します。

 

 

個人事業主の法人成りとは

個人事業主の法人成りとは、既に事業を行っている個人事業主が、法人化することです。

新しく法人を設立するという点では、起業に伴う法人設立と違いはありませんが、法人成りは、それまでに積み上げてきた事業や顧客そのほかの資産を引き継ぐことができます。

そのため、起業に伴う会社設立よりも有利であるといえますが、負債がある場合は、負債も引き継ぐことに注意が必要です。

 

法人成りで選択できる法人形態

法人成りするときは、以下の形態の法人を選択できます。

・株式会社

・合同会社

・合名会社

・合資会社

 

株式会社は物的会社と呼ばれ、合名会社、合資会社、合同会社は人的会社と呼ばれます。

以前は物的会社として有限会社も選択できましたが、現在は新規設立することはできません。

この中でも、法人成りではほとんどのケースで株式会社か合同会社が選択されています。

 

法人成りの目安

法人成りはいつまでに行うといった期限の指定はありませんが、一定の目安があります。

個人事業主の場合は、所得税としての5%~45%に加え、住民税の約10%が税率として掛かりますが、一方の法人は、法人税、事業税、住民税合わせて、約22%~35%の税率になります。

 

個人事業主の場合は、所得695万円超900万円以下であれば、住民税を合わせて約33%の税率となりますが、それに対応する法人所得400万円~800万円の場合は、約25%の税率です。

そのため、法人化した方が税率の下がる所得600万円~800万円が法人成りの1つの目安となっています。

 

 

法人成りの手続き

法人成り(会社設立)は以下の流れで行います。

(1)会社の基本的事項を定める

会社名である商号や、どのような事業を行うのか、会社の所在地はどこにするのかといった基本的事項を定めます。

(2)定款の作成

定款とは会社の根本原則を定めたもので、会社の目的や商号、本店所在地といった必ず記載が必要な絶対的記載事項と、必要があれば記載する相対的記載事項があります。

(3)公証人による定款認証を受ける

定款は、ただ作成すればよいというものではなく、公証人の認証を受けなければなりません。ただし認証が必要なのは、株式会社だけで人的会社や合同会社の場合は、認証不要です。

(4)法務局に登記申請を行う

定款や印鑑証明書、資本金の払い込み証明書など必要な書類を揃えて、法務局で登記申請を行います。実際に法務局に出向いて、登記申請を行う方法のほかに、オンラインによる申請も可能です。

 

会社設立の流れに関しては、こちらの記事も参考にしてください。

(おすすめ関連記事)

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会社設立には必須!定款の記載事項について紹介

定款認証とは?公証役場での定款認証の受け方

 

社会保険とは?

社会保険とは、病気や怪我、加齢や失業などさまざまな理由で生活が困難になったときに、公的な費用負担で、一定の給付を行い、支える公的な保険制度です。

代表的なものに失業に対する失業手当や老齢年金などがあり、病気や怪我で病院に掛かったときに3割負担で治療を受けられるのも、社会保険の1つである健康保険に加入しているからです。

 

社会保険には狭義と広義の社会保険があり、狭義の社会保険は、健康保険、厚生年金保険、介護保険の3つのみを指すのに対して、広義の社会保険は、労災保険と雇用保険の2つが加わります。

そのため、健康保険、厚生年金保険、介護保険を社会保険と呼び、労災保険と雇用保険を労働保険と呼んで区別する場合もあります。

 

 

社会保険の点から見た法人成りのメリット・デメリット

広義の社会保険に含まれる労災保険と雇用保険は、原則として従業員を雇用していれば加入が必要であるため、法人と個人事業でその適用に変わりはありません。

しかし健康保険と厚生年金保険は、常時従業員を雇用する法人であれば、その人数を問わず、適用を受けることになります。

 

常時雇用する従業員には、社長など役員も含まれており、法人成りを行うと、従業員を雇用していなくても、健康保険と厚生年金保険の加入が必要となってきます。

そのため、以下では法人成りに伴って加入が必要となる健康保険と厚生年金保険に絞って、法人成りのメリットとデメリットを解説します。

 

メリット

健康保険と厚生年金保険に加入することには、次のようなメリットがあります。

メリット1:将来受け取る年金額が増える

公的年金は、全国民共通である国民年金の基礎年金と、上乗せ部分である厚生年金の2階建ての構造になっています。

厚生年金保険に加入すれば、将来支給される年金額が増加することはもちろんのこと、障害年金や遺族年金の支給額も増加するため、従業員は安心して働けるようになります。

一人法人であっても、健康保険と厚生年金保険の適用を受けることは変わらないため、このメリットは従業員を雇用しているかどうかを問いません。

メリット2:独自の給付がある

健康保険には、加入者が病気や怪我の療養のため、働くことができない期間の生活を保障する「傷病手当金」や、出産の前後の一定期間に低下や喪失した所得を保障する「出産手当金」といった制度があります。

個人事業の場合は、原則として、国民健康保険に加入することになりますが、国民健康保険では、傷病手当金や出産手当金は支給されません。そのため、法人成りして健康保険に加入することで、より厚い保障を受けられることになります。

 

デメリット

法人成りを行い、健康保険と厚生年金保険に加入することは、年金額の増加や独自給付などメリットも大きいですが、デメリットもあります。

デメリット1:保険料の負担が増加する

健康保険と厚生年金保険に加入すると、当然に保険料の支払いが生じます。国民健康保険でも保険料の支払いは必要でしたが、健康保険と厚生年金保険に加入すると、保険料の折半義務が会社に生じます。

保険料は、標準報酬月額によって決まりますが、一般的に会社負担は給与の15%程度です。
この負担は非常に大きく、収益が安定していない時点では、メリットとの均衡を考える必要があります。

デメリット2:社会保険関係の事務負担が増える

健康保険と厚生年金保険に加入する場合は、健康保険・厚生年金保険新規適用届や健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届などの書類を年金事務所に提出し、手続きを行わなければなりません。

また加入手続きを行って終わりというものではなく、標準報酬月額の変更や給与支払いにおける保険料の計算など、加入後も行わなければならないことは多く、事務的な負担は大きく増加します。

専門家である社会保険労務士や税理士に頼む場合にも費用が必要であるため、こちらも負担となります。

 

 

本来健康保険と厚生年金保険はセットとなっており、一方だけ加入するということはできません。

しかし個人事業として国民健康保険組合に加入しており、健康保険適用除外申請を行って、承認を受ければ、国民健康保険と厚生年金保険という例外的な組み合わせも可能です。この組み合わせであれば、保険料の負担を抑えることができますが、保険料の折半負担もなく、独自給付も受けられないなど、従業員にとってのメリットは薄くなりますので、良く話し合ったうえで決めた方がよいでしょう。

会社設立後の社会保険の手続きに関してはこちらの記事も参考にしてください。

(おすすめ関連記事)会社設立後に必要な社会保険手続きとは?

 

 

まとめ

個人事業主の法人成りとは何かから始まり、その目安となるタイミングや手続き、メリット・デメリットについて紹介しました。

個人事業主の法人成りは、節税や年金支給額が増えるなどメリットも大きい一方で、保険料負担といったデメリットもある制度です。しかし必ず行わなければならないというものではなく、期限の指定などもありません。

ぜひ当記事を参考にして、メリット・デメリットやタイミングなどを考慮したうえで、法人成りの判断を行ってください。

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