法人税等の申告には青色申告と白色申告の2種類があることをご存じでしょうか?青色申告をすると税務上の特典を受けることができますが、そのためには事前の申請や要件などが必要となります。今回は法人税等の青色申告について解説します […]
会社を設立したら青色申告をしよう!概要、要件、メリットを解説
法人税等の申告には青色申告と白色申告の2種類があることをご存じでしょうか?青色申告をすると税務上の特典を受けることができますが、そのためには事前の申請や要件などが必要となります。今回は法人税等の青色申告について解説します。
青色申告とは?白色申告との違いは?
法人税等の申告には青色申告と白色申告の2種類があります。
青色申告とは、原則として複式簿記の仕組みに則った会計帳簿を作成し、保存することなどを要件として、税制上の優遇措置を受けることができる、というものです。
簡単に言うと、きちんと帳簿を作れば、税務面でメリットを与えますよ、ということです。
これにより正しい申告と納税をすることができるようになりますし、税務調査等でチェックもしやすくなりますので、税務署側としてもメリットがあります。
一方、白色申告は青色申告以外の場合をいい、簡易な方法での帳簿の作成で良い代わりに、税制上のメリットを受けることができません。何もしなくて良いわけではなく、白色申告でも一定の帳簿を作成する必要があります。
青色申告のメリット
法人の場合、青色申告をすることによって受けることができる税制上のメリットには次のようなものがあります。
メリット1:欠損金の繰越控除ができる
赤字(欠損)がでたときに、その赤字(欠損)を翌事業年度以降10年間繰り越しをすることができます。繰り越しした赤字(欠損)を翌事業年度以降に生じた黒字(所得)から控除することにより、黒字(所得)が生じたときの法人税等の負担を減らすことができます。
逆に言うと、白色申告の場合は、赤字(欠損)が生じた場合でも、切り捨てされ、翌事業年度以降の法人税等を減少させることはできません。
メリット2:欠損金の繰戻し還付ができる
中小法人の場合は、青色申告をしていると欠損金の繰戻し還付を受けることができます。
欠損金の繰戻し還付とは、前事業年度に黒字で法人税を支払っていて、その事業年度に赤字(欠損)が生じた場合に、赤字(欠損)の額に応じて前事業年度に支払った法人税の還付を受けることができる、というものです。
メリット3:少額減価償却資産を経費にすることができる
1年以上使用可能で、取得価額が10万円以上の資産を購入した場合は、原則として固定資産に計上し、減価償却を行う必要があります。
しかし、中小企業者等の場合は、青色申告をしていると、取得価額が30万円未満の資産について、取得時に経費処理することが可能です(ただし、合計で年300万円が上限)。
メリット4:その他の特例
最近では「賃上げ促進税制」など、一定の場合に法人税等が軽減される措置が設けられることがありますが、それらは青色申告を要件としていることが多くあります。
青色申告をしていなければ、特例で青色申告要件以外の要件を満たしているような場面でも、使えないこととなってしまいます。
このように、青色申告をしていると、税金を直接減らすことができる制度を利用できるようになります。
青色申告を受けるための要件
では、どのようにすれば青色申告のメリットを受けることができるのでしょうか?
青色申告をするためには次の2つの要件を満たしている必要があります。
要件1:期限までに青色申告の承認申請書を提出し、承認を受けること
所轄の税務署に「青色申告の承認申請書」を提出します。
提出期限は、青色申告の適用を受けたい事業年度の開始の日の前日までとなります。
設立第1期目から適用を受けたいときは、設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日が期限となります。
承認があっても税務署から通知が届くことはありません。特段の通知がなければ自動的に承認を受けたこととなります。
要件2:帳簿を備え付けて取引を記録し、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類を一定期間保存しておくこと
帳簿書類には、資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を、複式簿記の原則に従って、整然かつ明瞭に記録し、その記録に基づいて決算を行わなければなりません。
「帳簿」とは、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などのことをいいます。
「書類」とは、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などのことをいいます。
青色申告の承認が取消される場合とは?
青色申告の承認を受けていても、税務署から青色申告の承認を取消しされる場合があります。法人が青色申告の取消しをされるのは主に次のような場合です。
・帳簿書類を保存していない場合や提示しない場合
・帳簿書類の備付け等について、税務署長の指示に従わない場合
・隠蔽又は仮装を行っていた場合
・2事業年度連続して期限内に申告しなかった場合 など
この場合、税務署から、青色申告の承認取消通知書が送付され、通知された期間から青色申告ができなくなります。
健全に会社を経営するためには青色申告は必須
会社設立をすると初期投資が必要となる一方で、いきなり多くの売上が計上されることもないため、初年度は赤字決算となることも多いでしょう。青色申告をしていなければ、赤字の持ち越し(欠損金の繰越控除)ができないため、会社設立2年目に利益が出たら、すぐに税金を払わなければなりません。会社を健全に経営するためには少しのお金も大切ですから、余分な税金を払う訳にはいきません。
青色申告の唯一のデメリットは、正確な会計帳簿を作成しなければならないことです。
しかし、白色申告でも一定の会計帳簿の作成は必要です。また、正確な会計帳簿なしで正しい経営を行うことはできませんし、融資を受けることも難しいでしょう。いずれにしても会社経営にあたって正確な会計帳簿の作成をすることは不可欠です。
会社設立後、健全に会社を経営していくためには青色申告をすることは必須であるといえるでしょう。
青色申告は難しい?
青色申告をするためには、原則として複式簿記で会計帳簿を作成する必要があります。
会計帳簿は市販の会計ソフトを使って作成するとよいでしょう。クラウド会計ソフトを使えば、銀行やクレジットカードの取引データを取り込んで、自動で帳簿を作成してくれる便利な機能もあります。うまく活用すれば、それほど難しくはありません。とはいえ、何の知識がなくてもできるわけでもなく、一定の簿記の知識は必要ですし、ご自身で会計帳簿を作成するための時間も必要です。
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ご自身での対応が難しいときは、税理士などに相談するとよいでしょう。また、記帳代行のアウトソーシングサービスを利用するのも一つです。
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まとめ
法人の青色申告について解説しました。
会社設立後、会社を経営していくにあたって、税金は少しでも節税を図りたいですよね?
資金を残し、会社を健全に運営していくためにも青色申告をすることは必須であると言えるでしょう。会社を設立したら、青色申告のことを必ず理解しておきましょう。